2020年2月3日の写真の記事


新型コロナウイルスで何が起きるのか

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(2020:02:03 13:20:47, SONY α7R IV, F6.3, 1/1000, ISO:100, 64mm, 24-70mm F2.8(SEL2470GM), 撮影地, 潮位, 月齢:9.2, 長潮, 13.6℃, 991.7hPa, 52%)

少し前から新型コロナウイルス(2019-CoV)の爆発的な感染とそれによる伝染病(新型肺炎)が話題になっています。
2020年1月23日には中国の武漢が封鎖されたのを始め、中国内で封鎖が相次ぎ、2月3日現在では推定6500万人が封鎖エリア内に隔離されているという話があるほどです。

2020年2月3日現在、日本での感染者は20人、中国での感染者は1万7336人、感染の疑いがある人が2万1558人、重症が2296人、回復が516人、死亡が361人と発表されています。

ということで想像を交えて何が起きているか考えてみました。

SARSに関しての記事在香港日本国領事館「過去のお知らせ(2003)」は分かりやすく、ためになる内容なので一読をお勧めします。

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新型肺炎は2003年に中国で大感染したSARS(重症急性呼吸器症候群)や2012年に確認されたMERS(中東呼吸器症候群)、そしてごく一般的な「風邪」と同じくコロナウイルスによる感染性の病気です。

普通の風邪はほとんどの場合、発熱や咳などの軽い症状で終わります。
しかし新型肺炎やSARSなどは肺炎やそれによる重症化が起きます。

新型肺炎はSARSやMERSと類似点が多く、その感染や発症のメカニズムも類似していると考えらえます。
ただし一点だけ大きな相違点があります。それは「潜伏期間にも感染性がある」という点。SARSやMERSは自覚症状の現れた人のみ他人にウイルスを感染させますが、新型肺炎では熱も咳もない状態から他人への感染力を持ちます。


普通の風邪と新型肺炎などはその初期症状が同じです。
症状が風邪のまま終わるか、それともそれ以上の状態へ状態が悪化するかは免疫系の反応によって変わります。

新型肺炎を引き起こす新型コロナウイルス(2019-CoV)に感染しても潜伏期間最大14日間(早ければ2日、おおよそ1週間程度)は何も起きません(そしてそのまま何も起きず感染したことに気づくことすらなく回復することもあります)。

その後、普通の風邪を引いたのと同じ状態になり、38度以上の熱、悪寒、咳、下痢、息切れ、頭痛、筋肉のこわばり、全身の倦怠感、下痢などの初期症状が起きます。
この風邪の状態は1週間ほど続き、それで回復することもあります(MERSコロナウイルス(MERS-CoV)への感染では21%の人が回復します)。

風邪症状になった1週間後に急に肺炎になります。
肺炎になった2日後には人工呼吸器が必要になるほど悪化します(MERSでは肺炎になっても重症化せずに41%が回復します)
そして肺炎になった1週間後、風邪を引いてから2週間後に死亡します(MERSでは肺炎になったら44%、重症になったら74%が死亡します)。


新型コロナウイルスに感染すると潜伏期の1週間+風邪を引いている1週間の間に体内で新型コロナウイルスに対抗するための抗体が作られます。
体内で抗体がつくられると、正常であればその抗体によって新型コロナウイルスが中和されて回復するはずですが、そうはならずにADE(antibody-dependent enhancement)という反応が起きます。

ADEが起きると炎症性サイトカインの放出が増えます。すると炎症性サイトカインに刺激された白血球が肺を攻撃して肺炎が発症します。
そのときの炎症性サイトカイン量が少なければ軽い肺炎。多ければ重症の肺炎になります。
これはサイトカインの増加によって起きる症状のためサイトカインストーム(サイトカイン放出症候群)とも呼ばれています。


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炎症性サイトカインが増えるとなぜ肺が攻撃されるのかを始め、まだ調べきれていないことが多くて不明点ばかりですがおおよそ上記の流れだと思います。


WHOは1月31日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したものの、中国への渡航や貿易の制限などは必要ないとしました。
それを受けて日本政府は1月31日に「14日以内に中国・武漢市を含む湖北省に滞在歴のある外国人を当分の間、入国拒否する」としました。

日本は確認された感染は20人と少ないですが調査が行われていないためであり、実際には多くの感染者がいると考えられています。
さらに高確率で新型コロナウイルス感染者が中国から日本国内へ入国してしまう状態が続いています。

どう楽観的に考えても今後、日本で新型肺炎は流行します。
武漢のように患者数が増えすぎ診察すらできない状態にまで状況悪化するか、コントロールできるレベルに抑え込めるかは分かりません。2020年2月下旬~3月下旬に何が起きるか注目です。


現在は新型コロナウイルスの検出が(リアルタイム)RT-PCRでしか行えないため、一般的な日本人への調査は行われていません。
肺炎患者や診察に訪れた人などから大規模なサンプル収集をしたり、学校の生徒や公務員の発熱状態の記録をするなど、将来の医療のために厚生労働省が動けば貴重な研究資料になると思うのですが・・・


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SARSとMERSについて分かりやすい記事の一部をピックアップしてみました。

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在香港日本国領事館「過去のお知らせ(2003)」
在香港日本国領事館

潜伏期間は最大10日、平均5~6日。
自覚症状は38度以上の熱、悪寒、咳、下痢、息切れ、頭痛、筋肉のこわばり、全身の倦怠感、下痢。
発症者の80~90%の人は回復。10~20%の感染者は重症化して人工呼吸器の装着などが必要になる。
肺炎患者の致死率は10%(致死率の分母は感染数ではなく肺炎患者数)。

自覚症状発症後は感染力があり2~3人に感染を広げる。
接触感染と飛沫感染(1mから2m程度の濃厚接触)が中心。
空気感染の可能性は否定できない(重病人を閉じ切った部屋で看病する場合などは空気感染も考えられる。通常は空気感染しない)。
感染地からの輸入品・郵便物は心配ない。

「SARS」は肺炎を伴う症状として定義されているため、SARSウイルスに感染して発熱など自覚症状が現れた人であってもSARS患者としては扱いません。肺炎を発症して初めてSARS患者としてカウントされます。

回復後も呼吸困難などの肺機能低下の後遺症がある人がいる。原因がSARSか薬剤なのかは不明。

コロナウイルスが直接細胞障害を引き起こすのではなく、過剰な免疫反応により白血球が肺を攻撃することで肺炎が起きます。

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SARS(重症急性呼吸器症候群)の現状について
西川眞(新潟県保健環境科学研究所ウイルス科)

SARSウイルスは鼻汁、つば、喀痰、気管支肺胞吸引液、糞便、尿、嘔吐物などに存在。
鼻咽頭スワブではSARSウイルスの排出は、発症5~10日目に急激に増加する。
重症患者糞便中へのウイルス排出は1か月以上継続する。

体外に排出されたSARSウイルスの感染性保有期間は
室温、成人便で6時間
室温、下痢便で4日間

感染力は56度30分の過熱で大きく減少。
感染力はエタノール接触5分間で完全に失活。

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I's eye: 中東呼吸器症候群コロナウイルス
日本BD [日本ベクトン・ディッキンソン株式会社]

MERSにおけるADE(antibody-dependent enhancement)

一般的なコロナウイルスは風邪の原因として知られ、その抗体を多くのヒトが持っている。
MERS-CoV感染歴のないヒトであっても、通常のコロナウイルスの抗体とMERS-CoVの抗原が免疫複合体を形成しFcレセプターと結合すると考えられる。その結果、免疫担当細胞が刺激されてサイトカインが放出され炎症反応が起きる。
このような抗体による悪影響は抗体依存性感染増強(antibody-dependent enhancement:ADE)と呼ばれる。


※この記事は風邪ウイルスの抗体がADEにつながるとありますがそれを示す研究成果があるかは確認できませんでした

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Viral-Induced Enhanced Disease Illness
2018 Dec 5.
Maria K. Smatti, Asmaa A. Al Thani, and Hadi M. Yassine

一般的なADEの作用機序

1.ウイルス抗体複合体のFc領域が免疫細胞のFcγRへ結合
2.Th1サイトカインのIL2、TNF-α、IFN-γが減り、Th2サイトカインのIL-10、IL-6、PGE-2、INF-αが増加する
  さらにSTAT経路が阻害されIRFレベルが下がり、その後抗ウイルスiNOSが減る
(3.抗ウイルス反応が抑えられることでウイルス増殖が増える)

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Middle East respiratory syndrome: what we learned from the 2015 outbreak in the Republic of Korea
2018 Feb 27.
Myoung-don Oh, Wan Beom Park, Sang-Won Park, Pyoeng Gyun Choe, Ji Hwan Bang, Kyoung-Ho Song, Eu Suk Kim, Hong Bin Kim, and Nam Joong Kim

韓国のMERSアウトブレイク
n=186

重症率 20.4%

潜伏期間 2-14日(中間値7日)
伝染性期間 1-11日
rRT-PCR陰性になるまで 17日(中間値)

熱8日(中間値)
肺炎が急に出るまで7日
人工呼吸まで9日(中間値)
死ぬまで14日(中間値)


免疫を獲得するまで3週間。
無症状感染は、血清に抗体ある率0%
肺炎ない発症は、60.0%
呼吸障害のない肺炎患者は、93.8%
呼吸障害のある肺炎患者は、100%

生存した重症患者の血清抗体は11/11。12ヶ月以上検出された
生存したmild患者の血清抗体は2/6で検出

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WHO MERS Global Summary and Assessment of Risk (July 2019)
WHO
MERSの患者統計

n=2449のうち、845人が死亡
20.8%が無症状もしくはmild症状
32.7%が軽症
12.5%が重症ののち回復(46.5%が重症もしくは死亡)
34.5%が死亡(重症者の死亡率は74%、重軽症者の死亡率は44%)
#感染者の把握が十分に出来ていない可能性がある

n=2449の
年齢中間値は52歳(IQR37~65歳、IQR=中間値の50%範囲)
68.3%は男性
51.8%が持病あり(diabetes mellitus, hypertension, heart disease, chronic renal failure or lung disease)
17.9%が医療従事者


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新型肺炎の発症の仕組み

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(2020:02:03 13:30:56, SONY α7R IV, F9.0, 1/500, ISO:100, 61mm, 24-70mm F2.8(SEL2470GM), 撮影地, 潮位, 月齢:9.2, 長潮, 15.2℃, 994.9hPa, 52%)

2020年2月5日現在、日本での感染者は約32人(厚生労働省の発表は16人、32は報道で推定)、中国での感染者は2万4388人、感染の疑いがある人が2万3260人、重症が3219人、回復が912人、死亡が492人と発表されています。
また、タイで「日本から帰国したタイ人2人が日本で感染した可能性がある」との報道がありました。

厚生労働省の発表「新型コロナウイルス感染症は、我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません。」の通り、今はまだ発症者が見つかったという話はありません。
しかし日本国内で新型コロナウイルスへの感染が広がっている可能性が高い状況が続いています。

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ということで新型肺炎を引き起こす新型コロナウイルス(2019-CoV)とよく似た動きをするだろうSARSコロナウイルス(SARS-CoV)における感染/発症の流れです。


SARSコロナウイルス(SARS-CoV)を体内に取り込むと、ヒト気管上皮細胞とヒトの肺で増殖する。
このとき体内に取り込む量が多いと潜伏期が短く死亡率が高くなり、少ないと潜伏期が長く生存率が高くなる。
潜伏期間は2~10日程度で感染性を持つ。

自覚症状は普通の風邪と同じく、38度以上の熱、悪寒、咳、下痢、息切れ、頭痛、筋肉のこわばり、全身の倦怠感、下痢。その状態が1週間ほど継続する。
この間にSARSコロナウイルス(SARS-CoV)に対する非特異的な防御反応と抗体の開発が行われる。

その後、産生された抗体はSARSコロナウイルス(SARS-CoV)と結合しウイルス抗体複合体を形成する。
ウイルス抗体複合体のFc領域は免疫細胞(B細胞)のFcγRIIへ結合、免疫細胞内へ侵入し、抗ウイルスサイトカイン類を減らし炎症性サイトカインの放出を促す。

炎症性サイトカインが増加すると、それにより肺へマクロファージなどが集まり、急激に肺炎を発症する。
この段階の肺炎はマクロファージとTリンパ球の浸潤による肺胞損傷で、炎症性、浮腫、ガラス状膜変化であり、肺細胞の剥離が顕著。体内細胞の細胞質でSARSコロナウイルス(SARS-CoV)が見られるケースもある。

肺炎発症から10日後頃からさらに肺胞損傷で線維症、扁平上皮化生、多核ジャイアント細胞の増加がみられる。この段階はサイトカインの寄与は少なく、また肺の中のSARSコロナウイルス(SARS-CoV)量も少ない。
この頃には人工呼吸器の装着が必要となる。

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まだまだ資料を読み切れていないので理解できていないことだらけです。
興味深いのは感染量が多いと死亡リスクが大きくなる点と、肺炎の後期にはサイトカインストームの寄与が少なく、コロナウイルスも少ないという点。
意外に体内からのウイルス除去は速く、サイトカインストームも短期的なので、
肺炎発症初期からウイルスが消えるまでサイトカイン産生を抑えきれればなんとかなりそうに感じました。


SARS/MERSの報告を見ると未成年での感染/発症例がほとんどありません。
子供の風邪の引きやすさを考えると直観的にこれはおかしいと感じます。実際は感染しているものの、抗体産生が起きず発症もしない。また、後々の血清検査(抗体検査)でも感染を検出できないと考える方が自然です。
(子供のおたふく風邪が重症化しないのと同じ?)

SARS/MERSと異なり肺炎を発症していない場合でも、新型コロナウイルスは感染性を持ちます。
都市部では満員電車などで感染が広がることが容易に想像できますが、地方では子供の学校を媒介とした感染が起きそうな気がします。終息後に子供の有無と感染/発症の関係がどうなるか興味あるところです。



以下は今回参考にした資料とその一部抜粋。

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在香港日本国領事館「過去のお知らせ(2003)」
在香港日本国領事館

潜伏期間は最大10日、平均5~6日。
自覚症状は38度以上の熱、悪寒、咳、下痢、息切れ、頭痛、筋肉のこわばり、全身の倦怠感、下痢。
発症者の80~90%の人は回復。10~20%の感染者は重症化して人工呼吸器の装着などが必要になる。
肺炎患者の致死率は10%(致死率の分母は感染数ではなく肺炎患者数)。

自覚症状発症後は感染力があり2~3人に感染を広げる。
接触感染と飛沫感染(1mから2m程度の濃厚接触)が中心。
空気感染の可能性は否定できない(重病人を閉じ切った部屋で看病する場合などは空気感染も考えられる。通常は空気感染しない)。
感染地からの輸入品・郵便物は心配ない。

「SARS」は肺炎を伴う症状として定義されているため、SARSウイルスに感染して発熱など自覚症状が現れた人であってもSARS患者としては扱いません。肺炎を発症して初めてSARS患者としてカウントされます。

回復後も呼吸困難などの肺機能低下の後遺症がある人がいる。原因がSARSか薬剤なのかは不明。

コロナウイルスが直接細胞障害を引き起こすのではなく、過剰な免疫反応により白血球が肺を攻撃することで肺炎が起きます。

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Association between Severity of MERS-CoV Infection and Incubation Period
2016 Mar
Victor Virlogeux, Minah Park, Joseph T. Wu,1 and Benjamin J. Cowling


MERS@韓国
n=170

潜伏期の短さと死亡に相関がある。0.83%/day(信用区間0.68~1.03)で死亡率が減る。

潜伏期は0~21日。

死者の潜伏期は6.4日(信用区間5.2~7.9、n=36)
生存の潜伏期は7.1日(信用区間6.3~7.8、n=134)
その差は0.62日(信用区間0.99~2.04)


※どの信用区間も95%

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Incubation Period Duration and Severity of Clinical Disease Following Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Infection
2016 Sep 1
Victor Virlogeux,1,2 Vicky J. Fang,2 Joseph T. Wu,2 Lai-Ming Ho,2 J. S. Malik Peiris,2,3 Gabriel M. Leung,2 and Benjamin J. Cowling2

SARS
潜伏期の短さと死亡に相関がある。

サンプル数 死亡302(17%) 生存1453(83%) 全体1755
平均年齢  死亡66.6歳  生存38.7歳   全体43.5歳
男性    死亡173(57%) 生存604(42%)  全体777(44%)
医療関係者 死亡129(43%) 生存276(19%)  全体405(23%)

死者の潜伏期間 平均3.7日(信用区間2.6~5.8)
生存の潜伏期間 平均4.8日(信用区間4.2~5.5)
その差は1.02日(信用区間0.41~2.22)

短い潜伏期間は感染濃度の指標となる

高濃度の感染量に曝された医療従事者は潜伏期が短い。


※どの信用区間も95%



Middle East respiratory syndrome: what we learned from the 2015 outbreak in the Republic of Korea
2018 Feb 27.
Myoung-don Oh, Wan Beom Park, Sang-Won Park, Pyoeng Gyun Choe, Ji Hwan Bang, Kyoung-Ho Song, Eu Suk Kim, Hong Bin Kim, and Nam Joong Kim

韓国のMERSアウトブレイク
n=186

致死率 20.4%(重症率ではなく致死率)

持病なしの死亡率は10.1%
持病持ちの死亡率は35.1%


潜伏期間 2-14日(中間値7日)
伝染性期間 1-11日
rRT-PCR陰性になるまで 17日(中間値)

熱8日(中間値)
肺炎が急に出るまで7日
人工呼吸まで9日(中間値)
死ぬまで14日(中間値)

男性59.7%
女性40.3%

患者82人
家族や訪問63人
医者8人
看護師15人
Paid care givers 8人
....

0.0% 10代以下
0.5% 10代(16才1人、持病あり)
7.0% 20代
14.0% 30代
15.6% 40代
22.6% 50代。中間値55才
19.4% 60代
16.1% 70代
4.8% ~86歳

曝露10分間、会話2分間で感染に十分




免疫を獲得するまで3週間。
無症状感染は、血清に抗体ある率0%
肺炎ない発症は、60.0%
呼吸障害のない肺炎患者は、93.8%
呼吸障害のある肺炎患者は、100%

生存した重症患者の血清抗体は11/11。12ヶ月以上検出された
生存したmild患者の血清抗体は2/6で検出


The most common coexisting medical conditions were hypertension (31.7%), diabetes (18.8%), solid organ malignancy (13.4%), and chronic lung disease (10.2%).



出産でのMERS-CoV感染は認められなかった。


MERS-CoVは湿度40%、20度で48時間以上生存


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Active Replication of Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus and Aberrant Induction of Inflammatory Cytokines and Chemokines in Human Macrophages: Implications for Pathogenesis
24 September 2013
Jie Zhou, Hin Chu, Cun Li, Bosco Ho-Yin Wong, Zhong-Shan Cheng, Vincent Kwok-Man Poon, Tianhao Sun, Candy Choi-Yi Lau, Kenneth Kak-Yuen Wong, Jimmy Yu-Wai Chan ...



MERS-CoVは重度の肺炎や多臓器不全を起こし、高い致死率(MERSは50%、SARSは10%)を示す。

human monocyte derived macrophages (MDMs) =ヒト単球派生のマクロファージ

ウイルス増殖、サイトカイン/ケモカイン反応、SARS/MERS-CoV感染したMDM(マクロファージ)における抗原提示の状況を調べた。

MERS-CoVだけがMDM(マクロファージ)内で増殖した。

どちらも抗ウイルスサイトカイン(IFN-α、IFN-β)によって抑えられ、
どちらもTNFαとインターロイキン6で誘発された。

MERS-CoVの方が以下により大きく誘発された。
interleukin 12, IFN-γ, chemokines (IP-10/CXCL-10, MCP-1/CCL-2, MIP-1α/CCL-3, RANTES/CCL-5, and interleukin 8)

MERS-CoV感染したMDM(マクロファージ)の方がMHCクラスIと共刺激分子により増えた。



多くのMERS患者が急速に肺炎となっている。その多くが多臓器不全、リンパ球減少、好中球増加、血小板減少となった。
MERSはSARSと似るが、しばし腎臓不全が起きることや高い致死率という点が異なる。

マクロファージへのウイルス感染が病状悪化に寄与する。
マクロファージが生成したサイトカインやケモカインは免疫反応を引き起こす。
ほかのマクロファージであるMDMに比べて、ウイルス感染にたいして迅速に働く。

MERS-CoVはSARS-CoVよりも多くの臓器に広がる。
どちらもメインターゲットはヒト気管上皮細胞とヒトの肺。




ウイルス感染の反応において、マクロファージは炎症性サイトカイン/ケモカインを分泌し抗ウイルス系を活性化する。
しかしながらこれらの免疫細胞へのウイルス感染で炎症性物質生成の調節機構を破壊する。
SARSや鳥インフルエンザのヒト感染では、炎症誘発性物質のIL-6とTNF-αの異常な増加はウイルス感染による呼吸器の重症化で特徴的。

SARSではIFN-γによる免疫刺激効果が抗ウイルス効果よりも高い。

IL-12はT細胞やNK細胞の働きを促進するとともにそれらの細胞内で炎症性サイトカインの生成を誘導する。

MIP-1α, MCP-1, IP-10は感染場所での単球/マクロファージ、T細胞、NK細胞、急性炎症性細胞を強く化学誘引する。

顆粒球とT細胞に対する化学誘引のほかに、RANTESはT細胞とNK細胞の活性化を促す。

IL-8は好中球とその他の顆粒球への強い化学走性をもつ。ほかのケモカインの誘発剤ともなる。

抗ウイルス性IFNとサイトカインはSARS-CoVに感染したマクロファージや樹状細胞の中で誘発されない。
たぶんSARS-CoVは先天性免疫反応に対抗するために進化したから。

対照的に炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)とケモカイン(IP-10、MIP-1α、MCP-1)は上昇する。

SARS患者で見られる炎症性サイトカイン/ケモカイン(IL-6, IL-8, IFN-γ, MCP-1, IP-10など)レベルは病状の重さや死亡と相関がある。
加えて患者の肺組織のマクロファージはサイトカインストームを引き起こし、また、SARSの病因と考えられている。

SARS-CoVとMERS-CoVに感染したMDM(マクロファージ)でのサイトカイン/ケモカインを比較することで類似傾向を見つけた。
特筆すべきは、ケモカインと免疫刺激サイトカインが集めた免疫細胞はMERS-CoVの方が多く、また、長引いた。
これがMERSの病状悪化と致死率の高さの要因と考えられる。


MHC class I、MHC class II、共刺激の関連遺伝子はMERS-CoV感染MDM(マクロファージ)で少し誘発された。レベル的にはわずかにSARS-CoVの場合よりも強い。
MERS-CoV感染した肺がん細胞での抗原提示の減少とは対照的。


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Viral-Induced Enhanced Disease Illness
2018 Dec 5.
Maria K. Smatti, Asmaa A. Al Thani, and Hadi M. Yassine

1.ウイルス抗体複合体のFc領域が免疫細胞のFcγRへ結合
2.Th1サイトカインのIL2、TNF-α、IFN-γが減り、Th2サイトカインのIL-10、IL-6、PGE-2、INF-αが増加する
  さらにSTAT経路が阻害されIRFレベルが下がり、その後抗ウイルスiNOSが減る
3.抗ウイルス反応が抑えられることでウイルス増殖が増える

※Th1サイトカインは細胞性免疫を亢進
※Th2サイトカインは炎症性サイトカイン。炎症を強め機能障害や細胞・組織の崩壊をもたらす。慢性関節リウマチなどでは炎症性サイトカインが病気を悪化

※色々な病気のサイトカインストームについて詳しい
※SARS/MERS、インフルエンザも

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SARS: clinical virology and pathogenesis
14 November 2003
John NICHOLLS Xiao‐Ping DONG Gu JIANG Malik PEIRIS


SARS患者の鼻咽頭の吸引、尿、便からウイルスが検出された。
発症3日目の患者の鼻咽頭の吸引サンプルのRT-PCRで80%検出できる。
発症10日目の患者の血清内細胞の免疫蛍光で感染細胞を確認できる。


発症から数日は呼吸経路と糞便にSARS-CoVは少ないが、11日をピークに増加する。

抗原反応が遅れる患者もいるので血清内細胞の免疫蛍光は少なくとも21日間するのがいい。
ただし急性症状期に高濃度のステロイド治療をしている場合は、発症から28日間が理想。


SARS肺炎には2フェーズある。
最初の10日で急性の肺胞損傷(DAD)がみられる。損傷は、炎症性、浮腫、ガラス状膜変化であり、肺細胞の剥離が顕著。体内細胞の細胞質でウイルスが見られるケースもある。
10日以降はさらに線維症、扁平上皮化生、多核ジャイアント細胞の増加がみられる。

ヒトを含む霊長類では肺からSARS-CoVが検出されている。

赤血球貪食現象を伴った間質性マクロファージ(INT)と肺胞マクロファージ(AM)の増加の前に亡くなった患者もいくらかいる。

霊長類の調査では
気管支リンパ節と脾臓肥大が見つかった。しかしリンパ球は少ない。
このリンパ球減少はインフルエンザ誘発性のマクロファージ減少症の病因と類似性がある。
肺胞マクロファージ(AM)の増加も見つかった。

インフルエンザではこの現象は、感染場所へ血中単核細胞がケモカイン刺激で集まることで説明できる。

通常、肺の肺胞マクロファージ(AM)は単球由来の最終形態であり、間質性マクロファージ(INT)はその前段階である。
肺胞マクロファージ(AM)は感染源に対する非特異的な防御を担い、間質性マクロファージ(INT)は間質性リンパ球と協力して特異的な免疫反応を誘発する。

サイトカインは線維症ステージに関与しないと考えられるが、初期段階の肺胞損傷メカニズムは明らかになっていない。
マクロファージによるTNF-αの増加はTリンパ球を導き肺胞隔炎となる。
肺胞壁と肺胞間質にTリンパ球が存在する。

最初の肺胞損傷ステージはマクロファージとTリンパ球の浸潤により引き起こされ、
次の人工呼吸器が必要となる繊維症ステージはサイトカインの寄与が小さく、肺の中に存在するウイルス量も少ない。

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